DESIGN IT!Conference 2009で考えたこと

2009年11月21日 01:15

今回のカンファレンスは良い意味で期待を裏切られ、数日経ってようやく暗雲の先が見えてきた。

イベントの真の狙いは何か?

僕は、DESIGN IT!はWeb系のお馴染みイベントの一つだと思っていた。CSS NiteやWDEのように恒例化し、お馴染みの講師や若者が集まる場を期待していた。

ところが、DESIGN IT!magazine vol.2あたりから業務アプリや企業の情報システム色が濃くなり、それが今回のイベントにも反映されている。講演は業務アプリやサービスの話題が増えた。テーマこそ「クラウド時代のユーザーエクスペリエンス」だったものの、クラウドに直接関連した講演は少なかった。僕の講演もクラウドには関係なく、選んだCMSがクラウドベースのSaaS型CMSだった、というだけだ。

Googleの基調講演は客寄せで、RIAも業務アプリとの接点でしかないのか?Webと非Webの間の壁を壊すため、あえて多様な講演を集めて、参加者に考えるきっかけを与えたのか?CMS+IAという自分の講演にはどのような意義があったのか?コンテンツ管理や効率UPはユーザー中心主義から乖離した運用者の都合でしかないのか?

非IT企業の逆襲が始まった?

Webの世界では、Googleに象徴されるようなIT企業が技術やトレンドを牽引してきた(と思ってきた)。ユーザーエクスペリエンスという概念も90年代後半にWebの世界で広まり、リアルな世界の延長としてユーザー体験を考えてWebを設計・構築すべきだ、と主張されてきた。かくいう私も情報アーキテクチャやユーザビリティ、コンテンツ管理の分野を開拓し、実践してきたという自負を持っていた。

ところが、この流れは逆流しつつあるのかもしれない。リアルの延長としてWebだけを考えるのは片手落ちで、店舗デザインや業務アプリ、端末、さらにはサービスそのもの「あり方」を再検討する必要がある。Webの世界でこれまで僕たちが主張し、非Web文化に対して価値を示すために使ってきたUX論が、今度はWeb関係者に内省を迫ってきている。

暗雲が立ちこめる?

こうなると、Webのみを制作・開発してきた企業は部品の受注企業になってしまう。実際、Web業界はデフレが激しく、コモディティ化した産業になりつつあるのではないか?スマートフォンやRIA、マイクロブログやSNSなどの新しいモノを先取りする以外に自らの価値を高める方法は無いのだろうか?

苦悶の準備期間

いつもは、講演の打診を受けた後に何度か直接会って議論を重ね、自分への期待とイベントにおける役割を明確にしてから準備に取り掛かるようにしている。講演の成否は主催者とオーディエンスの期待にどれくらい応えられるか、だと思っていた。

ところが、今回は「クラウド」。他の講演内容も様子が違う。気軽に相談しないで自分で考えることにし、悶々と考える日々が続いた。UIや戦略的な話が多そうなので、消化不良を起こすWeb系の人たちにとって役立つ実践的な内容にしようと最初は考えた。

ところが、他の講演の詳細がUPされるのを見ているうちに「どうも違うかもしれない」と考えるようになり、10日前にタイトルを急遽変更。「CMS+IAで変化ヲ抱擁セヨ - 不景気を乗り切るために今すべきこと」とし、地に足の着いた実践を語りつつも、技術や方法論ではない心構え的な内容にシフトしてみた。

そして当日

そして当日。午前中の長氏の講演は、WebではないのにWebと同じUX論を語っている事実にまずショックを受ける。午後は、当日の配布物からは内容を推測できず(事前資料が少ないセッションもあった)、聞くべき講演をいくつか逃してしまった。そして自分の番を迎え、45分という短い時間にギリギリ間に合ったものの、Twitterのつぶやきも質問も名刺交換もほぼ皆無。新ネタを詰め込みすぎて失敗したかな?という不安を抱えたまま、最後のパネルを静かに聴講。そこではさらに「今日は全体的にユーザーの視点が足りなかった」というベテラン先輩の厳しいご指摘が。おっしゃる通りです...。軽い敗北感を感じつつ、懇親会会場へ向かった。

前向きでいこう!

一方、帰宅後に自宅で講演資料をUPしたところ、Twitterでは続々とポジティブなコメントが。

kasukasu0111: 素晴らしいですね。勉強になりました。 
maokun: 全力で読む
safama: 読んでるなう
bookslope: Check out this slide!
ytesaki: すごい。なにがって、ホントにやってるところが。
ouchicom: すごい
SuiJackDo: 非常に参考になりました。

資料の公開ページには3日間で282のアクセスがあり、このサイトも翌日252セッション、631PVという記録を達成。これで良かったのかも?まだまだいける?

考えてみると、UXはユーザー視点の経験であり、確かにWebはその一部でしかない。ITを信奉する僕たちは、少し視野が狭くなっていたのかもしれない。WebのUIもエクスペリエンスもコモディティ化しつつあり、Web業界だけが活躍できるわけではなくなってきた。非Web企業は長年の経験と知恵を活かし、Webを構築・活用できるようになってきた。Webの制作や開発に携わる人間も企業も、視野を広げる必要がある。そのためには、僕ら自身も変化し、他の分野や業種の人たちとの接点を模索し続けなければならない。「変化ヲ抱擁セヨ」と自分でも主張したではないか?不景気を乗り切るために前向きでいこう!自分でそう主張しておきながら、そのことに自分で疑問を抱き、数日後にもう一度それを信じるようになった、というわけだ。講師も考えさせるイベント設計。そこまで狙っていた?

まだまだやることはたくさんありそうだ。このようなきっかけを与えてくれたスタッフ・講演者・オーディエンス(twitter含む)の方々に感謝いたします。

講演資料CMS+IAで変化ヲ抱擁セヨ - 不景気を乗り切るために今すべきこと

次の講演:情報処理学会 デジタルドキュメントシンポジウム2009


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